労働組合監査ならば緒方会計

労働組合法第5条第2項第7号の規定により、会計報告にあたり、労働組合は職業的に資格がある会計監査人(公認会計士、監査法人)による証明書とともに組合員に報告しなければならないと規定されています。

労働組合監査を扱っている経験から、労働組合監査について情報提供したいと思います。

1.労働組合とは
労働組合とは、労働者が主体となって、自主的に労働条件の維持改善その他経済地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体またはその連合団体をいいます(労組法2条)。
労働組合の設置根拠は憲法28条であり、労働組合が労働組合法上の様々な手続きに参加し、救済措置を受けるためには、規約を整備し、労働委員会に証拠を提出して、資格審査を受けなければなりません。
この規約に定める事項として労組法52項があり、その中で会計監査人の監査証明を要求することを定める必要があります。
資格審査に適合した労働組合は、主たる事務所の所在地において登記することで、法人となることができます(労組法111項)。
労働組合は、他の公益法人などとは異なり、自治権が重視される結果、会計報告書を主務官庁に提出することまで定めておらず、また主務官庁による指導監督などもありません。

2.労働組合会計について
労働組合会計に関する指針としては、昭和6010月に公益法人委員会報告第5号「労働組合会計基準」が制定・公表されています。
公表されてから年月が経っており、またこれは強制されるものではなく、ガイドライン、指針という性格のものですが、すでに多くの労働組合において採用されており、「一般に公正妥当と認められる労働組合会計の基準」として定着している感があります。
但し、各組合固有の会計に関する規定は、会計規程として別に定められていることが多いです。

労働組合会計の特色としては、下記のような点があげられます。

  計算書類
計算書類とは、収支計算書貸借対照表附属明細表となります(労働組合会計基準 1.2)。その他に資産・負債の異動を明確化するための正味財産増減計算書、附属明細表に代えて財産目録を作成するケースもあります。計算書類には注記が必要となります(労働組合会計基準 1.6

  事業計画、予算重視の会計
予算は活動計画(事業計画)に基づいて作成されなければならず、また収入および支出は原則として収支に関する予算に基づいて行わなければなりません(労働組合会計基準 2.1)。
収支計算書は、収支の予算額と決算額とを対比して表示しなければならず、予算額と決算額との差異が著しい項目については、その理由を備考欄に記載する必要があります(労働組合会計基準 3.2)。
支出について大幅な予算超過があった場合は、補正予算や予備費の使用が考えられます。労働組合会計では、当初の事業計画に基づいて業務を行ったかどうかが重視されます。

  本部・支部会計、特別会計の設定
組合組織が一体として運営される支部を設けている場合は、当該支部を含めた活動状況を明らかにする計算書類を作成しなければなりません(労働組合会計基準 5)。
特別の目的を定めて徴収した資金を財源として組合活動を行う場合には、当該活動状況を明らかにするための特別会計を設けなければなりません(労働組合会計基準 6.1)。
特別会計には、特別目的のために大会、規約等で別途定めて徴収することで行う特別会計(ex闘争資金、犠牲者救済資金)と、一般会計の資金のうち管理上の利便のために設定された特別会計(ex退職積立金、会館維持管理)があります。

3.労働組合の監査について
 労組法527号において、会計報告にあたり、組合員に委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に報告しなければならないことが求められています。
外 部監査人である会計監査人は、第三者の目で会計の専門的知識からリスクアプローチに基づく監査を行うことになります。直接の不正誤謬発見を直接の目的とはしておりませんが、事業上のリスク、内部統制の状況に基づいて計算書類に重要な虚偽表示をもたらす可能性について、リスクを識別し、評価し、それに応じた監査手続きを実施することになります。
 この時に重要になってくるのが、内部監査との連携です。内部監査において外部監査においては扱わない、日常活動と運営についての業務監査や能率監査を行うことで、外部監査との相互補完性が保たれることとなります。但し内部監査部門を保有しない労働組合も多いのは事実です。その場合は、事務局や執行委員長などとの連携が重要になってきます。
 また、労働組合の監査は期が締ってから、監査報告までの期間が短いのも特徴です。そのため、監査も期が締ってから集中的に行うという特徴があります。

4.外部監査人の変更について
 外部監査人の変更を検討する時期としては決算を行うタイミングというのが実務的には多いのではないでしょうか。外部監査人の変更理由としては、外部監査人の対応力の低さ、高齢化、監査報酬の見直しということが挙げられます。近年、労働組合は組合加入率の低下などによる長期的な収入減少傾向に悩まされており、監査人への支出も含めて検討しなければならないケースが出てきていると思います。


5.報酬の目安

当事務所では労働組合の各種事情に配慮し、財務状況に応じた報酬のお見積りをご提案させていただきます。
ご質問・お問い合わせお気軽にご連絡ください。