中小企業の株式は上場企業の株式のように売却換金できないにもかかわらず、その株式の価値に対して相続税や贈与税がかかってきます。中小企業の株式の評価とは、いわゆる取引相場のない企業の相続税評価額のことです。
非上場企業の株式の相続税評価は、
①株式の持株割合
②発行会社の規模
によって決められています。
①の株式の持株割合が少なく、同族以外で、『配当期待権』程度の価値しかない少数株主は、所有株式の会社の配当実績に基づく配当還元方式(特例的評価方式)により評価することになります。
同族株主などが株式を取得する場合には原則的評価方式により計算することとなります。
その中で、非上場企業の中には、上場会社なみの大企業もあれば、個人事業程度の零細企業もあります。そこで、非上場企業の同族株主の所有株式については、従業員数、1年間の売上高、簿価総資産額という三つの要素によって、大会社、中会社、小会社、特定の評価会社の四つの区分します。
配当還元方式(特例的評価方式)とは?
配当還元方式(特例的評価方式)は、配当還元価額により株価を評価する方法です。配当還元価額とは、年間配当金額を10%で割り戻して計算した株価です。株式の財産価値を、配当収入を生む資産としてのみの側面から評価する手法で、会社支配権を有しない同族株主以外の少数株主は配当収入のみを期待しているであろうということからそれに沿った評価方式です。
原則的評価方式には
①純資産価額方式
②類似業種比準方式
③純資産価額方式と類似業種比準方式の併用
の三つがあり、会社の規模によって適用する方式が異なります。
会社の規模に応じた原則的評価方式
原則的評価方式を適用するにあたっての会社の規模は、従業員数、総資産価額、売上高により、大会社、中会社、小会社、特定の評価会社の四つに区分します。それぞれに適用される評価方式は下記のとおりです。
①大会社
類似業種比準方式(純資産価額方式も可能)
②中会社
併用方式(純資産価額方式の代用も可能)。
中会社の中でさらに規模により、大(L=0.9)、中(L=0.75)、小(L=0.6)に区分される。
③小会社
純資産価額方式(L=0.5の併用方式も可能)
純資産価額方式とは?
純資産価額方式とは、発行会社が課税時期(相続または贈与により株式を取得した日)に清算した場合に株主に分配される正味財産の価値をもって、株式の相続税評価額と考える評価方法です。
具体的には下記のように、資産の相続税評価額から、負債の相続税評価額及び資産の含み益に対する法人税額を差し引いて、評価会社の株式価額を求めます。
純資産価額方式により株価を計算する場合は、保有資産の含み益が株価に反映されますので、保有資産の含み益が大きい場合には、株価が高額になる可能性があります。
類似業種比準方式とは、国税庁が公表している業種ごとの株価に比準して、評価会社の株価を求める方式です。
比準要素は、1株当りの配当金額、1株当りの利益金額、1株当りの純資産価額(帳簿価額)の3要素です。具体的には下記のとおり計算されます。
※斟酌率:大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5
この計算式におけるA、B、C、D、(B)、(C)、(D)は下記のとおり。
この2つによって決められています。
A :類似業種の株価
B :類似業種の1株当りの配当金額
C :類似業種の1株当りの年利益金額
D :類似業種の1株当りの純資産価額(帳簿価額)
(B):評価会社の1株当りの配当金額
(C):評価会社の1株当りの年利益金額
(D):評価会社の1株当りの純資産価額(帳簿価額)
計算式からみた特徴は、まず利益に対して3倍のウエイト付けをしているため、好業績企業株価は高くなる傾向にあります。次に純資産価額について、帳簿価額で計算しているため、含み益に対して株価計算に反映されないという特徴を持っております。
上記の類似業種比準方式で計算した株価のL%相当額と純資産価額方式で計算した株価の(100-L)%相当額を足して会社の株価を求めるという折衷方式で、計算式は次のとおりです。L%には、会社の規模によって90%、75%、60%、50%を適用します。
会社規模の判定とは?
会社の規模は、卸売業、小売・サービス業、それ以外の業種別に総資産額(帳簿価額)、1年間の従業員数、1年間の取引金額の組み合わせによって判定します。具体的には「会社規模の判定基準」によって判定します。
会社規模の判定基準表
1.従業員数が100人以上の会社は大会社とする
2.従業員数が100人未満の会社は、(a)と(b)のいずれか大きいほうで判定する
(a)従業員数を加味した総資産基準
(b)取引金額基準
取引金額 | 会社規模 | ||
---|---|---|---|
卸売業 | 小売・サービス業 | その他の業種 | |
80億円以上 | 20億円以上 | 20億円以上 | 大会社 |
50億円以上 | 12億円以上 | 14億円以上 | 中会社の大 |
25億円以上 | 6億円以上 | 7億円以上 | 中会社の中 |
2億円以上 | 6千万円以上 | 8千万円以上 | 中会社の小 |
2億円未満 | 6千万円未満 | 8千万円未満 | 小会社 |
Lの割合
中会社の大 L=0.90 (90%)
中会社の中 L=0.75 (75%)
中会社の小 L=0.60 (60%)